2.大滝ダムの地滑り対策について
山村さちほ議員
川上村白屋地区で、3月中旬に試験湛水をはじめてから、発生している地滑り問題で、地元の方から連絡をうけたわが党の塩谷村議とともに、私も現地をうかがってきました。
大滝ダム建設による白屋地区の地滑りの危険性は、すでに30年前に地区住民の依頼をうけて調査に入った2人の学者、当時、龍谷大学教授、元金沢経済大学学長の吉岡氏と金沢経済大学助教授の和田氏がまとめた「奈良県川上村大滝ダムに関する調査研究」によって警告されていました。(1974年5月の)その結論では、「大滝ダム建設によって、川上村白屋地区を中心とする川上村の地滑りが拡大することは必至であり、現在までの科学と技術では、それを防止することができない、これが残念ながら本論の結論である」「その対策としては、ほかの安全なところに移転するしかない」と述べていました。 また、奈良県がおこなった昭和48年からの、奈良県地質調査委員会の調査では、その報告書において、「ダム建設によって水没斜面の地滑りはおこりえるものと言わねばならない」また「潜在性地滑り地と考えられ、ダム建設と関係なく、おこりえることを示唆するもの」とのべています。これは、重要な警告であります。
当時から、白屋地区住民は、水没者と同じように移転させてほしいと訴えられておりました。「もはや白屋は安住の地とはいいがたいものになってしまいます。われわれは先祖からうけついだこの地を、更に次の世代によりよい土地にしてわたす義務がありますが(白屋地区住民は)安全な地区への住民の移転を要求するものであります」と苦汁の思いを要望書のなかでのべておられます。
日本共産党は、この住民の要望をうけて、その当時から、村議会、県議会、国会でも取り上げてきました。1980年(昭和55年)の県議会では、当時の宇賀神博県議が、「『ダムができて水かさが増すほど、傾斜地の崩壊の恐れがある』ことを、県の地質調査委員会の結果から指摘し、建設省は、地滑り対策を発表したが、そこに住みつづける住民にとっては、将来ともに地滑りを防止できるのか不安がある。県は建設省に対して、白屋地区の移転をふくめ、住民の納得のいく対策をとるよう強く要求すべきである」と質問しています。しかし、この時も県当局は、「白屋地区については、建設省は『たちのきの心配はいらない』と言っている」と答えています。
県と国が、住民の切実な要望を無視したまま、大滝ダムの建設をすすめてきたことは明らかであります。
このような経過の上で、現在のダムの湛水の影響と考えられる地滑りも初期現象の発生という事態のなかで、白屋地区の方々が移転の要望を出しておられるのです。また村議会でも、この住民の移転の要望を村をあげて実現の要求をすべきと議論され、村当局も、「住民の意向を最大限に重視し、全戸移転をはじめとする要望を国側に強く申し入れていく」と述べています。
住民の安全を守る立場で、住民の納得のいく対策を
奈良県として、住民の安全を守る立場で、この住民の願いを率直に受け止め、国に対して将来にわたっての抜本的対策として、移転をふくめ、住民の納得のいく対策をとることを要求すべきと考えますが、いかがでしょうか。
柿本善也知事 県におきましては、亀裂現象発生の第一報をうけた当初から、1つは災害防止のための早め早めの点検と対応が必要である、専門的な検討と迅速な安全対策の確立が必要である、地元の不安解消を図るためのとりくみが必要である、この3点を最優先課題であるという基本姿勢にたちまして、取り組んできたところでございます。国(国土交通省)にたいしても全国組織でのダムのノウハウ、いままでいろいろな経験がおありでございましょうから、そういうノウハウを総動員して対応していただくようにと、これは私からも直に近畿地方整備局長に電話で要請したところでございます。
このうちで安全対策につきましては、国、県、村の3者の協議によりまして、監視観測体制や、万一に備えた避難体制を整備してきたところでございます。また、家屋に亀裂がはいるなどで生活に支障がある方々については川上村の協力も得て、一時避難用の仮移転住居が確保されたわけでございます。それとともに、その他の方々についても国が一時避難用の仮設住宅を建設する方向で地元との協議がととのったところでございます。この問題は、基本的にはやはり、亀裂現象の原因を究明することが大切だと考えられておりまして、国が設置した大滝ダム白屋地区亀裂現象対策検討委員会を通じて、国において早期に調査が実施されるように要請してまいっております。
また、今後も、そういう要請をしてまいりたいと思います。なお、安全対策につきましては、先般もこの県議会でお答えした答弁にしたがいまして、昨日、県の川上村白屋地区安全対策会議を設置開催したところでございます。今後とも国、川上村と連携を蜜にしながら諸般の情勢に対応してまいりたいと考えております。
山村さちほ議員 再質問いたします。私は、緊急対策は非常に重要なことであり、これをきちんとやっていただくということは必要であると思いますし、特に、これも住民の立場にたってすすめていただきたいと思いますが、今回、お聞きしましたのは、住民にとりまして移転の要望を出されるというのは、2度目の要望であるということです。1度目は地すべりが起こりうる地域、このように言われまして、もはや安全な地ではないと、大変つらく思いながらも自ら述べなくてはならなかった、そういう思いが、結局は通じなくて、県や国を信じてダムの建設をしてきたのに、そのダムによって、指摘をされてきた危険が現実のものに、起こったわけです。
こういう住民の思い、これはやはり、県として本当に重くうけとめる、これが必要ではないかと思うんです。県民の命と安全を守るべき、そういう立場にある県が安全には住めないといっている住民が移転を望んでいるということを、やはり正面から受け止めていただいて、国へ要望していただくということが筋ではないか、私はそのように思っております。この点について、知事はそのようにお考えになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
柿本善也知事 大滝ダムの安全対策が大切なことは、先ほど答弁で、われわれも同じ考えでございます。移転の要望があるということは私どもも聴いておりますが、基本的には、さきほど答弁をいたしましたように、この亀裂現象の原因を究明することが必要でございます。従いまして、国が設置した大滝ダム白屋地区亀裂現象対策検討委員会において、早期にこの調査を実施されるよう要望したところでございます。今後も要望していきたい、左様、先ほど答えたとおりでございますので、ご了解いただきたいと思います。
山村さちほ議員 当面の安全対策、それと将来にわたる抜本的な対策ということがいると思うんです。この場合は、原因を調査をするということは大事ですが、そして万全の対策をとったとしても今以上の万全の対策、絶対にこれから地すべりがおこらないという、そういう保障があるのか、地すべりが起こる危険性というのはなくなるんだろうか、そういう疑問がどうしても住民のなかには残ります。
村営住宅に移られた方は、自分が寝ていたその畳の下で、おこっていた事態をみて、もうとてもここには戻れない、こういうようにおっしゃっていますよね。このところで、県として、やはり将来にわたる、抜本的な対策として、移転ということを含めてどう考えるのかということをいま、真剣に検討していただきたいというふうに思うわけです。国が調査の結果をまっているというのではなくて、やはり、県民の安全、それを守っていく立場で取り組んでほしいと、このように私はお聞きしております。
柿本善也知事 移転を決めるためには、その原因の究明をしなければならない。山村議員、いかなる専門家か存じませんが、それを決めないで、事柄を、結果をきめるというのは、所詮、無理だろうと思います。だからこそ、私のほうは、まっているのではなくて、その原因究明をいそいでくれということを申し上げているんですから、私のほうで精一杯のことを申し上げていることをご理解いただいきたいと思います。
大滝ダム建設にかかわる危険個所等の総合的で全面的な安全点検が必要です
山村さちほ議員 また、県民の命にかかわる問題ですから、慎重の上にも慎重なチェック体制、県の調査委員会が必要と考えますが、いかがでしょうか。
これまでの大滝ダム建設の経過のなかで、住民がのべているように、昭和48年3月23日に白屋区民に示された建設省の「調査資料」によると「岩盤部分については、その傾きは河床近くでは、いわゆるサカ目となり、また比較的堅硬であるので、良好といえる」として図をそえていたものが、奈良県地質調査委員会の報告書では、「斜面の大部分は流れ盤の単斜構造である」と全く逆のことがのべられ、「湛水による地滑りの発生の可能性が高いという報告になっている」と、白屋地区の地質は当初の建設省の主張と逆であったという事実もあります。
現在、国土交通省は亀裂現象対策検討委員会を設置し、今後の対策を検討されていますが、水源地域対策の責任は県にありますから、県としても、住民の生命と安全を守る自治体の本来の責務をはたす立場で、調査委員会を設置して二重のチェックをしていくことが必要と考えます。
さらに、川上村の地滑り危険箇所は5カ所(村内の地滑り危険個所は9カ所、大滝ダム関連地滑り危険個所は5カ所とされている)、土石流危険渓流が8カ所、急傾斜地危険箇所が35カ所とされています。また平成13年に大滝ダム建設の基本計画の変更をして、原石山クラック対策や水没地伐採によって確認された大規模なクラック対策をおこなっている経過もあります。
この際、大滝ダム建設にともなう地滑り対策等の安全性について全面的な点検が必要であると考えますが、いかがでしょうか。
南哲行土木部長 国におきましては、亀裂現象の原因究明のために5月27日に専門家等からなります大滝ダム白屋地区亀裂現象対策検討委員会が設置されたところでございます。6月5日には第1回委員会が開催されまして、原因究明と今後の対策につきまして検討されております。また緊急調査結果が整う8月末に第2回委員会を開催しまして、亀裂現象の原因究明、および対策の基本方針がしめされるものと期待しております。国土交通省が設置をします当該委員会は全国各地でダムを数多く建設しております。建設をしまして様々な事象、経験、ノウハウを蓄積していることからより高い調査解析をおこない、適切な対応をなされるものと考えております。国の対策委員会には県もオブザーバーとして参画しており、県が掌握しておりますデータや資料を提出しまして審議がなされることにより県の意見も十分反映されるものと考えております。
次に、大滝ダム建設にともなう地すべり対策の安全性について全面的なチェックをしてはどうかということでございます。
大滝ダム建設にともないまして国土交通省が調査した結果、湛水の影響で地すべりの危険性のある箇所は5箇所確認されております。これらの箇所については抑止杭、アンカー工などの対策工事を実施しておりまして、斜面の安全性安定性を検証するため、それらのすべてに観測機器を設置したところでございます。これらを設置した以降、観測が継続されていますが、現在のところ、白屋地区以外では異常がないと聞いております。最終的には試験湛水は実施することにより、ダム本体の安全性のほか法面状況の点検など全体の点検もおこなうことになっております。 |